両親を結婚式に呼ばなかった話

結婚しました。

 

自分の人生でこんな日が来るなんて思ってもいなかった。一生一人で生活していくんだと思ってたし、そもそもこの歳まで生きる予定もなかった。自分で自分に驚いている。

 

結婚式には、うちの家族は全員呼ばなかった。正直、ギリギリまで悩んだけど、式が終わってみるとこれで良かったんだと思う。

プロポーズされたと伝えた時の母の第一声は「相手3つ下?絶対将来ババアって言われるわ」だった。さすがに酷いと思って抗議したところ、母の中では「ババアって言われてもいい!その人が好きなの!→家族全員で拍手→Happy End」というストーリーがあったのに!と逆抗議された。この件については未だに意味がわからない。ヤバい人間っていうのはマジでいるんだなと再確認した。

婚約した時は義実家一同の前で弟がキレ(キレた理由はさっさと家に帰りたいから)、会食の席を脱走。義実家をドン引きさせた上、「ちぬちゃん大丈夫?あの後殴られたりしてない?」と心配された。弟からは「てめーの結婚式なんか出ねえよ!キモイんだよ!」と怒鳴られた上、部屋の壁を叩かれたが、それを見た両親からは「弟くんの機嫌を損ねたんだからお姉ちゃんが謝りなさい」とのありがたいお言葉をいただいた。私はそれを聞いて泣いたが、母はなぜ私が泣いているのか本当に理解出来ていないようで、婚約者に「〇〇くん、ちぬちゃん泣いちゃった!」と言っていた。婚約者は静かに怒りながら、冷静に私家族に帰宅を促していた。

ドレスを選んだと伝えた時の母の第一声も忘れない。「まさか袖無しの着る気じゃないだろうね!?みっともない腕を人様に見せるな!」だった。母は私の病気がキチガイ病だと言っており、周りの人にバレることをとにかく嫌っていた。袖付きのものにしたと伝えても、ドレスを着ることをよく思っていなかったようで、何かブツブツ言っていた。

 

結婚式に親を呼ぶかどうかで禿げるまで悩み、祈った中で出た結論は「呼ばない」だった。正直、心のどこかで今までの事を謝罪され、結婚式に出席させてくれと言われると思っていた。結婚式を欠席してください、と伝えた時の父の返事は「了解」、母に至っては「それは別にいいけど、予約した留袖はどうしたらいいの?相手のご両親はくるの?」だった。相手の家族はなんの問題もないのだから来るに決まっているだろう。留袖は自分でなんとかしてくれ。返信はしなかった。

 

結婚式前の1週間、私はとてもソワソワしていた。「家族から電話が来て、結婚式に参列させてくれと言われたらどうしよう」「結婚式前日にLINEで今までありがとうって言われたらどうしよう」「今度こそ修復できるかも」…そんな話を毎日のように婚約者にしていた。婚約者はものすごく複雑そうな顔で「連絡が来たら一緒に考えようか」と言った。連絡が来ることは無かった。結婚式当日も、結婚式後も、同じ理由でソワソワしていたが、今のところ謝られたり祝福されることはなく、完全に連絡がきていない。せめて「おめでとう」の一言だけでも来ると思っていた私が馬鹿だった。

 

婚姻届を出して苗字が変わり、戸籍が抜けた時、「ああ、ようやくここまでこれた」と思った。新しい苗字が嬉しくて嬉しくて、InstagramFacebookもLINEも全て氏名を変更した。やっと解放された。やっと自由になれた。呪われた苗字から解き放たれた。あの家から出ることができた。私にとって、姓が変わることは「結婚の喜び」よりも「虐待からの解放」だった。

両親は今何を思っているのだろうか。弟は私のことをどう思っているのだろうか。答えは知る由もないが、ただ一つ、あの人たちの目が早く覚めるようにと願う。

 

私はこれから幸せになる。幸せにならなければならない。今まで知らなかったあたたかい家庭を築いていく。子供を作る予定はないので、夫を大切にして、夫婦二人で生きていく。